宮崎グループ

体積走査法を用いた3次元立体表示に関する研究

はじめに

 近年3次元画像がさまざまな分野で応用されるにつれ,3次元ディスプレイの研究が盛んに行われてきた.我々は傾斜した像面をミラースキャナで移動させることで3次元空間を高速に走査し,物体の傾斜2次元切断面画像を適した位置に順次表示して空間に3次元像を形成する3次元ディスプレイの開発を行ってきた.この方法で表示された3次元画像は眼鏡などの装着物を必要とせずに観察でき,人が立体感を感じるための立体視の要因をすべて満たしている.以前の試作システムでは2次元ディスプレイとしてCRTディスプレイを使用してきた.しかしCRTディスプレイ自体に残像が起こるために,断面画像を走査の位置にあわせて高速で切り替えたときに不用な輝点が残る現象が生じ,不明瞭な3次元像になっていた.そこでCRTディスプレイの代わりに Digital Micromirror Device (DMD)を利用するにより,以前よりも明瞭で高解像度な画像を表示する.また触覚デバイスを用いて3次元像に直接操作を加えることにより移動や回転といった動作をリアルタイムで行う.

傾斜面を用いた体積走査法

 図1のように,凹面鏡とミラースキャナによる結像光学系において,2次元ディスプレイを光軸に対して45度傾けて配置し2次元ディスプレイの角度にあわせて各位置で切断した数百枚の切断面画像を用意する.2次元ディスプレイ上に切断面画像を順次表示する.ミラースキャナの振動と同期させ人の眼の残像閾値(18Hz)以上の速さで走査させることにより,人の眼の残像効果でちらつきのない2次元画像が表示されることとなる.

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図1 体積走査法

CRTを用いた3次元画像表示

 上記のディスプレイシステムを用いて表示した3次元画像を表示した.図2に表示用データ作成のために用いた3DCGを示し,図3に3次元画像を表示する.

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DMDを用いた3次元画像表示

 DMDのフレームレートを8000Hzとし,このフレームレートで同期させたガルバノスキャナの振動周波数が20Hzであった.人の頭蓋骨のCG(図2)を使って3次元画像を表示した.(図4)

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図4 DMDを用いた3次元画像

ディザリング処理を施した3次元画像表示(DMD)

 本研究では組織的ディザというディザリング手法を用いることで断面画像に輝度情報を持たせた.組織的ディザとは,まず4×4のベイヤー型のマトリックスを用意する.入力画像の画素値を0〜255から0〜15に規格化し,用意したマトリックスを4×4の領域に重ね合わせ,それぞれの画素値を大小比較する.画素値が入力画像の方が大きければ1を,小さければ0を出力し,4×4の領域分の比較が終われば右にずれて次の領域に移動する.これを入力画像のすべての領域で繰り返して画像を出力する.出力された画像は,それぞれの画素では白と黒の2値画像であるが,画像全体でみると16段階の輝度値を持っている.画像の処理手順を図5に示す.

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図5 組織的ディザ

 以上の方法を用いて,輝度情報付きの3次元画像を表示する.図6、図7に使用する3DCGを示す.上記の方法でディザリング処理し表示された3次元画像を図8、図9に示す.

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触覚デバイス

 触覚デバイスとは,3次元コンピュータグラフィックスとして作られた仮想物体に触った感触を与える装置である.触覚装置で触った感触を与えることができる仮想物体を,触覚物体と呼ぶこととする.

 本研究では触覚デバイスとしてSensAble社のPHANTOMという装置を用いた(図10).PHANTOMにはスタイラスが付いており,操作領域内で自由に動かすことが可能である.スタイラスの先が3次元グラフィック内でカーソルとして表示され,それが他のオブジェクトと重なると,状況に応じて反発力や摩擦力を返すことができる.

 制御についてはOpen-GLライブラリとPHANTOM独自のライブラリを組み合わせたプログラムにより行っている.

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図10 PHANTOM

 スタイラスの操作領域に触覚物体を表示し,3次元ディスプレイシステムの表示領域に重ね合わせる.このように構築した3次元ユーザインターフェースシステムを図11に示す.

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図11 3次元ユーザインターフェースシステム

 図12のようにスタイラスの先で3次元像に触れようとすると反発力を感じることができた.図13は像に触れているときにスタイラスのボタンを押しながらスタイラスを移動・回転させると,3次元像がリアルタイムに同じ動きで移動回転している様子である.

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図12 触角

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図13 移動と回転